お知らせ ( 2008年9月 の記事 )

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2008年9月8日(月)

腫瘍マーカー陽性!でも症状がない!データも検査も正常!

人間ドックでよく行われる検査に腫瘍マーカーがあります。

先日ある方が人間ドックをうけて腫瘍マーカー陽性(ちょっとだけ高い)と出ました。

その方はランニングを1日10kmくらいしていて、他のデータはすべて正常、食欲もあり、快便快眠、血圧も正常。

当方に相談され、消化器系のマーカーなので、内視鏡、MR,造影CTを行いましたが異常なし、そこで腫瘍マーカーを再検査したところ、少し上昇していたために、PETCTまで行い、何もでてこないという状態。

この腫瘍マーカーは血液型との関係で陽性に出ることもあるのでそれを調べても関係なし。

やむなく少し様子を見ようということになりました。

こんな状況をどうみるかですね。

1)患者として:腫瘍マーカー陽性ということで癌があるかもしれない、といわれたことになります。さぞや驚くことでしょう。近々命がなくなるということを宣告された(?)ような気分ですね。

こんなの疑陽性だろうとか、空威張りしたくなります。

それはそれとして、もし本当に癌があったらどうするでしょう。

自分の一生を振りかえり、残り少ない日々をどうするか、真剣に考えるでしょう。

私たちの一生は長いようでいて、それほど長くないのです。人生80年として3万日。時間にして72万時間。起きている時間だけ考えれば50万時間そこそこです。

40歳ー50歳くらいになっていたとしたら、もうすでにかなりな時間が経過してしまっていて、元気でいたとしても、残りを多く見積もっても平均的には1万日、時間にして15,6万時間なのですね。

それが癌といわれてどうなるか。相対的にその日数や時間がかなり短縮されてしまうという現実につきあたる。

最近”癌々生きる”というブログをみましたが、こんな生き方もあると思うと、限りある時間を何でもかんでも精一杯生きていこう、っていう気になります。

つまり癌であることを宣告されようがされまいが、残りの時間は限りがあるということです。

2)医者として: こんな状況をどのように説得するべきか、いまだに上手く説明できません。もし私自身が同様に腫瘍マーカーだけが高かったとしても、一般的にやれるところまでやることになるでしょう。

前立腺がんのスクリーニングでPSAという検査の意義がないという見解が以前発表されていました。つまりPSAを行っても陽性な人が少なすぎて、費用をかけたのに癌を発見する確率が低すぎるというものです。

では現実にはどうか。PSAは陰性である人がほとんどです。それも事実ですが、陰性である意義があるのですね。陰性であれば癌ではない確率がかなり高い。この効果が腫瘍マーカーを調べる大きな意義であるのです。腫瘍マーカーは陽性である意義よりも陰性である意義のほうが人々の気持ちに大きく貢献しているのだということです。

3)検査の精度として:検査値は絶対ではありません。どんな検査値も疑陽性や疑陰性があるわけです。特に基準範囲と決められている値付近というのは疑陽性、疑陰性は多い。腫瘍マーカーというのは性質上陰性であればほとんど真に陰性であるほうに重きが置かれています。一方陽性であっても疑陽性(=ほんとうは癌がない)はありうるように基準範囲を設定されていることが多いのです。 

検査値の特異度(=本当に陽性であるということ)を上げるには検査に関連した検査前の状況が大事なのです。検査前に兆候がない場合に確率的には検査の価値が極端に減ってしまうのです。