Ars long bita brevis: 移転に寄せて

 

杜の奥に楠の木がある。
幹は両手を広げたよりも太い。
空に向かって真っすぐ立っている。
周りの木々からすると際立って高い。

楠の木をみあげると、
太い幹は枝を幾度となく枝をだし、次第に細くなりながら次第に大きく広がっていく。。
枝と葉で空を覆わんばかりに広がっている。 

枝には緑の葉が一年中繁っている。
けれど葉は重なることがない。
葉と葉の間のむこうには真っ青な空が広がっている。

さわやかな風がとおりぬける。
風が吹き抜ける。枝がゆっくりと揺れ、葉がやさしくなびいている。
その向こうから太陽の光が木洩れ日となって心地よいきらめきをおくってくれる。

この木が今日のようになるまでにどれだけの時間を要したことであろう。
この地球がこの木を生み出すための時間。
それは私たちという人類を生み出すための時間でもあった。

しかし私たち個々の一生というものはみじかいものだ。
短いとしても、喜んだり、悲しんだり、良いことがあったり、思わしくないことがあったりする。
限りある命がすこしでも生き生きと生きていられるように、
私たちのクリニックは診療し続けたいと願っている。