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2007年9月9日(日)

前立腺がん集団検診、推奨せず:陰性による安心

本日の読売新聞に前立腺がん検診(PSA)について厚労省は論文2000本にわたって調べ、その意義が疑問であるとの報告が載っていた。

現実に70歳以上のPSA高値の症例では手術する場合としない場合があるが手術の有無に関わらず生存期間に差がないことがしられている。

PSA高値の場合、その後の検査も煩雑である。あたかも肺がん検診のようである。

このように集団への意義を考えるとがん検診の意義は少ないというべきかも知れない。

私も開業するまではおおよそそのように考えていた(ずいぶんと鈍い人間です)。

しかしクリニックで行う検査はすべてが”陽性”であろうと思って検査しているわけではない。また。時には”陽性”が疑われるがあいまいな場合や、”陰性”を確認する場合などもあって、検査を行う状況は常に”陽性”であることを確認するようなものではない。そもそも臨床症状では判定が難しいから検査するのであり(検査はその状況の程度も教えてくれるが)、ましてや腫瘍マーカーなどは症状があって癌が直接疑われない限り、すぐにおこなうものでもないだろう(保険上は画像診断が多くの場合必要。一般に普及している腫瘍マーカーの感度、特異度はまだ十分ではない。また一般の方々が期待しているのは腫瘍があっても手遅れでないことだが、実際にはそこまでの価値は、一部を除いてまだないと思う)。

”陽性”をうたがっても最終的に”陰性”であることで、次のアクションが変更されることもある。また”陰性”であることで、時には患者さんに”よかったですね”と声をかけることもある。 100%の安心は得られないかもしれないけれど(人の行為に100%の安心などはない)、一応このまま様子を見ることができる。一方”陽性”であれば次の検査プロセスが待っている。

つまり”陽性”には”陽性”の意味があるが、”陰性”には”陰性”の意味がある。”陰性”であることでの次のアクション(検査しないというアクションもある)に結びつくことは”陰性”という結果にも”陽性”と同様の意義がある。

検診が”陽性”だけを求めて実施するのであれば、おおよそ腫瘍マーカーや胃がん検診などはその意義、労力、費用をどのように考えるのだろう(こういう決定は常に恣意的である)。検診の際の一般検査にしても陽性率などは脂質、肝機能、血圧を除いて実際にわずかである。脂質、肝機能、血圧は検査以前の問診(家族歴、生活状況の聴取など)や症状でわかることも多い。これを検診の意義とするのだろうか。

検診の意義は陽性所見も重要であるが、陰性所見を得ることによるある意味での”安心”を得るという意義があると思う。